住宅ローン、低金利の甘く危険な誘惑
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日経電子版より
住宅ローンの三大要素である「借入金額」「借入期間」「借入金利」のうち、今回は3つ目の「借入金利」について説明します。住宅ローンの金利は過去最低の水準を更新しています。多くの人は「金利は低ければ低い方がよい」と考えるでしょうが、そのためには前提条件があります。それに気がつかないままでは、かえってリスクを招きやすい危険な考えということになりかねないのです。
■リスクと付き合うことの意味
ここ20年くらい、短期金利と長期金利を比べると、短期金利の方が低い状態が続いています。つまり、「低い金利がよい」ということは、変動金利や短い固定期間の固定金利がいいという風に、短絡的に解釈する人がいます。
変動金利や短い期間の固定金利には金利変動リスクがあります。リスクとの付き合い方がわからないまま、リスクテイクをするのは、交通ルールを知らずに自動車の運転をするような危険行為です。筆者が考える「リスクとのつきあい方」は次の通りです。
(1)リスクを知る:問題となる事象がどれくらい発生するか(発生確率)、どのくらい家計に影響があるのか(ダメージの大きさ)を知る
(2)許容度を知る:リスクを取る主体である家計のリスク許容度やリスク管理能力も把握
(3)リスク回避手段を理解:「繰り上げ返済する」「借り換えする」などのリスク回避手段のメリット・デメリットを理解する
(4)対策を練る:リスクに応じて、「取る」のか「回避する」のか、どこまで取るのかなどを決めておく■金利変動に3つのリスク
特に、住宅ローン商品に内在する金利変動リスクについては、その性質をよく調べるだけでなく、家計のリスク許容度やリスク回避手段を十分に吟味しなければなりません。
金利変動リスクは、細かく分けると「金利上昇リスク」「金利下降リスク」「金利が変化しないリスク」の3種類あります。現在の金利水準を考えれば、この3つのうち「金利上昇リスク」こそ、慎重に検討すべきでしょう。そして、リスク許容度の範囲内で、適切な手段を講じた上で、リスクを取ることが求められます。
■「史上最低金利」が注目だが
住宅ローンの変動金利の水準はさらに低下傾向にあります。三井住友信託銀行の「2年固定型」の最優遇金利は6月に年0.35%に下がり、過去最低を更新しました。0.35%の金利を個人が利用できるというのは、本当にすごいことです。上場企業の中でも超優良企業でなければ使えないような金利です。でも、この安さに目がくらんで選択することは正しい行為なのでしょうか。実際の家計を例に挙げて、みてみましょう。
現状の家計での住宅に関係する費用は、家賃など直接の住宅関連費用が月9万円、住宅購入などに備えた貯蓄が3万円、教育費の積立が1万円で、計13万円です。ちなみに「教育費積み立て」を住宅購入費用の計算に入れているのは、教育費の支払時期が住宅ローンの返済時期と重なるからです。教育費の準備が不十分なために、子どもの大学費用の支払時期に赤字に陥る家計が多いため、そうならないよう住宅購入時点で教育費の準備について再検討しました。このケースでは、購入後の教育費は3万円に増額しました。
現状:年収450万円、住宅関連費用9万円、毎月の貯蓄3万円、教育費積立1万円、他の借入金はなし
住宅購入後:固定資産税・都市計画税で月1万円、修繕積立金で月1万円、子どもの教育積立金3万円収入から支出を差し引いたフリーキャッシュフロー(FCF)は10%(月3万7500円)確保する前提だと住宅ローンの返済可能額は月4万2500円になります。
■本番はこれから
2年固定0.35%を利用すると、借入可能額は1679万円となります。フラット35(金利1.74%)で計算した場合の1336万円よりも可能額は大きくなりますが、物件の平均価格3637万円には遠く及びません。
頭金をゼロとして、借入金額を3637万円、借入期間35年とすると、毎月返済額は9万2020円になります。FCFを5%(月1万8750円)確保するという前提で計算すると、返済可能額は6万1250円。つまり、家計の見直し必要額は約3万円となり、何とか節約などで捻出できそうな水準のように見えます。多くの方がここで安心してしまい、思考停止してしまいます。実は、ここからが本番なのです。
金利が上昇した場合には、その分だけ見直し額が増えます。金利が6年目に1~3%上昇し、完済時まで同じ金利のまま続く場合の毎月返済額と元利総支払額への影響をみてみましょう。
6年目に金利が2%以上上昇すると、毎月返済額は大きく上昇します。自分の家計にとってこの上昇額に耐えられるのかどうかを確認しなくてはなりません。ここで勘違いしていただきたくないのは、金利が1~3%上昇することを予想しているのではなく、万が一3%上昇した場合に、家計が耐えられるのかどうかをチェックしているわけです。これが先ほどの、「リスクを知る」ということなのです。
今回のケースでいえば、FCFが1万8750円なので、金利が1%以上上昇すると家計が赤字化してしまいます。金利タイプを低くする(=変動金利タイプにする)ことで目先の収支は改善できましたが、金利1%の上昇で家計収支が赤字に転落するという、最も危険な事態に陥る可能性があることがわかりました。つまり、「リスク過剰」だと判断できます。
■無自覚なリスクテイクがもっとも危険
目先のコスト削減を選択することで、家計のリスク許容度を超えた潜在リスクを抱えてしまうケースは、よく見られます。借入金額1000万円の人と、借入金額3000万円の人とでは、同じ金利1%上昇でも家計に対するインパクトが変わるということを覚えておいてください。
不動産業者や住宅業者から「毎月いくらくらい返済ができますか?」または「○○円くらいなら返済できそうですか?」と聞かれたとき、適用金利を確認せずに、「10万円ぐらいなら大丈夫」と答えていないでしょうか。そのケースを試算してみます。
借入期間35年、元利均等方式という前提だと、(1)2年固定0.35%の借入可能額は3953万円、(2)フラット35の1.73%は3148万円になります。
3953万円を借りる前提とすれば、当初の毎月返済額は(1)が10万15円、(2)が12万5537円となります。「10万円ぐらいなら大丈夫」と回答したあなたは、思わず(1)を選択したくなるでしょう。ところが、(1)には金利上昇リスクがあります。
■リスクをとるなら借入額を減額
勧められるがまま3953万円を2年固定で借りてしまっている人は、どれだけのリスクを負っているのかを知る必要があるでしょう。もし、10万円以上の返済額は難しいという理由で変動金利を選んだならば、もし将来金利が上昇したとしても、返済額が10万円以内に収まるようにしなければなりません。
フラット35で計算した借入金額3148万円よりも、金利リスクを負いつつ、さらに借入金額を増額するのは論外だといえます。金利リスクをとるなら借入金額を減額すべきです。金利が上昇しても毎月返済額が10万円以内に収まるような借り入れをするなら、借入金額を1765万円減額する必要があると試算できます。くれぐれも金利リスクと借入金額を同時に増やすことは避けてください。