区分所有の投資ローンについての金融機関の考え
家主と地主(54号)に、住宅ローン借り換えセンター代表の望月が
コラムを寄稿いたしました。
今回は、分譲マンションの区分所有に関するお話をしたいと思います。
アパートオーナーのなかには、
分散投資のためにアパート以外に区分所有を保有されている方も多いです。
区分所有の場合は、空室=家賃0円というリスクがあるため
これを懸念し、家賃保証会社やサブリーズを利用される方も多いのではないでしょうか。ところで、区分所有の投資ローンについて金融機関はどう考えているのでしょうか。
住宅ローンとアパートローンを比較した場合、住宅ローンは全ての金融機関が積極的ですが
アパートローンは金融機関によって温度差が出るという話は前号までのシリーズでお話しました。金融機関は、区分所有の投資ローンについてはアパートローンよりも更に消極的です。
この理由は、区分所有の場合は空室=家賃0円=延滞発生リスクが高いからだと思われます。しかし、売却する場合はアパートよりも区分所有の方が容易です。
こういった理由からか、アパートよりも区分所有の投資ローンを積極的に
推進する金融機関もわずかですがあります。
この点は、金融機関によって好き嫌いがはっきりしております。資金調達の王道は、いくつかの取引銀行をつくり、実績を積み上げ
信頼関係を構築していくことが最も重要であることは間違いありません。
しかし、既存の取引銀行が不得意としているローン分野では、
いくら信頼関係や実績があってもローンが組めるとは限りません。このように、金融機関を画一的に見るのではなく、それぞれの得意分野
や積極的な取り組み方針などをこまめに情報収集していれば、購入資金の調達に
おける金融機関の選定に役立ちます。ところで、区分所有の投資ローンの金融機関の審査基準は
どのようになっているのでしょうか。
これも金融機関によって様々です。
ローン期間の基準となる耐用年数ですが、区分所有の場合は
鉄筋コンクリートがほとんどですので、その場合法定耐用年数は47年ですが
ローン期間はこれよりも短く、平均的には30年以下のところが多いです。評価基準については、アパートの評価の場合、積算評価と収益還元法による
評価(以下『収益評価』と表記します)ですが、区分所有の場合は
類似物件などの売買事例が多く存在する関係から売買事例と収益評価の
両方を見て査定している金融機関がほとんどです。アパートの場合、積算評価と収益評価を比較した場合
収益評価の方が高くなるケースが多いです。しかし、区分所有の場合は売買事例の方が高かったり
収益評価の方が高かったりと物件によって評価が変わります。
何故、このような現象が起きるかというと、
区分所有の場合は投資用物件のみではなく、自己使用のための
住居用として買われる方の存在があるからです。この評価方法の違いは、区分所有を売却しようとする場合において
オーナーを悩ませる一因となります。
家賃収入のある投資物件として売り出すか、住居用として売り出すか
どちらの方が高く売却できるかといった悩ましい問題です。金融機関の評価方法においても、
区分所有は空室=家賃0円=延滞発生リスクが高い分、債権回収を念頭に
貸し倒れリスクが発生しないよう評価は慎重になる傾向があります。なお、区分所有の場合、ファミリータイプの方が住居用としても
エンドユーザーに売却できることから、収益価格よりも高く売れる可能性が
あるというメリットがある一方、
空室となった場合のローンの自己負担額が大きいというデメリットがあります。ワンルームマンションの場合は、住居用(または事務所用)で売れる可能性は
低くほとんどが賃貸収入での投資目的での購入となるため、
収益価格で評価しておくのが無難といえます。このように、金融機関のローン審査の評価方法や基準を知ることも大事ですが
万が一のリスクに備え、売却を踏まえた上で評価し、
その上でローンを検討することが重要と言えます。